「繁殖馬セールに出てきた時は目を疑いました。上場当時、空胎だったことで落札できたのだと思います。空胎だったことが逆にラッキーでした」とナカノファーム代表の中野将大さんが話すのは募集本馬の母トラディションについて。
　JCダート2連覇などダートGI級競走4勝、ドバイワールドC2着のトランセンドの半妹トラディションは、母として送り出した6頭の仔のうち4頭がJRA勝馬となっている。その内訳も現役3勝馬が2頭に2勝馬と現役1勝馬という仔出しの良さだ。
　その母を牧場に迎えた中野さんが配合相手に選んだのが、2020年JRA最優秀ダートホースのチュウワウィザード。近親にルヴァンスレーヴ（JRA最優秀ダートホース）、アイアンテーラー（クイーン賞）がおり、現役時代にはダートGI級競走4勝を挙げた砂の猛者。ドバイワールドCでも2着1回、3着が1回と力を示した。
　ヒーロー22は『ダート中長距離のトラディショナル配合』とも言うべき組み合わせで産まれた。1歳6月上旬時点の馬体重は350キロ。5月生まれの分、これからの成長が多く見込まれ、表情などにもまだ幼さを残すものの、その馬体は脚が短く見えるほど胸が深く、踏み込みの深い後躯とやや硬めの繫は、血統通りダート適正の高さを伝えている。放牧地では、芝への夢に一瞬想いを馳せてしまいそうになる手先の軽さとシャープな動きを披露するが、これこそがスピードを求められる現代のダート競馬を勝ち進むために必要なボディバランスと言える。
　「怪我や病気をすることなく冬を越し、早生まれの馬とも遜色ない位にサイズが追い付いてきました。気の強い面があり、放牧地ではスピード感のある軽快な動きを見せています。とは言え、やはり本質的に、適性はダート中距離だと思います。血統通りの活躍を期待しています」と中野さんが力強く頷きながら目を輝かせた。